日本臨床外科学会雑誌
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症例
小腸イレウス緊急手術を契機に診断された腸間膜デスモイド型線維腫症の1例
久下 博之吉川 周作横谷 倫世横尾 貴史稲次 直樹宮沢 善夫
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2017 年 78 巻 4 号 p. 754-758

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抄録

52歳,女性.間欠的腹痛を主訴に他の医療機関を受診し,腸閉塞疑いで投薬が行われた.2週間後,当院受診時には腹部全体が膨隆し,腸管蠕動音は亢進していたが,軽度圧痛を認めるのみで軟だった.腹部CT検査で,少量の腹水と右下腹部に小腸拡張部と非拡張部境界を認めた.絞扼性イレウスの診断で緊急手術を行った.回腸末端から40cmの小腸間膜に白色結節を認め,回腸漿膜を巻き込み絞扼することで閉塞起点となっていた.小腸壊死は認めず腹水も血性ではなかった.小腸部分切除を行った.悪性疾患播種性病変の可能性があると考え腹腔内全体を視診・触診を行うも異常所見は認めず.腹水細胞診陰性.術後10日で軽快退院した.腫瘍径0.8cmのmesenteric fibrosisと病理診断された.家族性大腸腺腫症(FAP)や開腹手術の既往なく発生する腸間膜線維腫症は稀とされ,文献検索では0.8cmの腸間膜線維腫症は最小だった.

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© 2017 日本臨床外科学会
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