抄録
症例は74歳,男性.主訴は経口摂取困難.食事のつかえを自覚し,上部消化管内視鏡検査にて下部食道に3型腫瘍を指摘された.当初,治療拒否され民間療法を選択され,その後,腫瘍の増大による通過障害をきたしたため,二度食道ステント留置術を施行した.腫瘍の左肺下葉浸潤による膿瘍形成を認め,この時点で手術治療の希望がなされた.肺浸潤を認めるものの遠隔転移を認めず,cT4a(左肺S10)N3M0→cStage IIIで根治切除が可能と判断した.上中縦隔郭清を右側から胸腔鏡下に,下縦隔操作については左胸腹連続斜切開のもと施行した.医中誌にて「食道癌」「肺浸潤」「両側開胸」をkey wordに検索した結果症例報告はわずかであり,本症例のように胸腔鏡と開胸操作を併用した報告はみられなかった.局所進行下部食道癌において両側アプローチは侵襲性・根治性の両面から有用な術式であり,臨床的に採用可能であると考えられた.