日本臨床外科学会雑誌
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症例
Segmental arterial mediolysisによる右胃大網動脈瘤破裂の1例
内田 知顕吉原 秀一大石 晋野崎 剛奈良 昌樹袴田 健一
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2017 年 78 巻 9 号 p. 2045-2050

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抄録

症例は86歳の女性で,突然の下腹部痛と嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された.CT検査で腹水と胃大弯部の血管から腹腔内への造影剤の漏出を認めたため,腹腔内出血と診断し緊急手術を施行した.開腹したところ,胃の大弯側に沿った大網内に多量の血腫と,血腫近傍の右胃大網動脈領域の血管から活動性の出血を認め,右胃大網動脈瘤破裂と診断された.動脈瘤を含めた大網部分切除術を施行し術後経過は良好であった.病理組織学的所見で動脈瘤破裂の原因はsegmental arterial mediolysis (SAM)と考えられた.近年では,解離性の内臓動脈瘤においてその多くにSAMが関与している可能性が報告されているが,SAMを原因とする胃大網動脈瘤の報告例はまだ少ない.SAMによる内臓動脈瘤破裂は急性腹症の鑑別疾患の一つとして念頭に置くべき疾患で,手術適応の速やかな判断とともに多発病変の検索も必要と思われる.

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© 2017 日本臨床外科学会
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