2018 年 79 巻 1 号 p. 106-112
症例は37歳,男性.17年前に貧血,低蛋白血症を指摘された.10年前より腹痛を自覚しており,徐々に増悪していた.平成27年6月,かつてない腹痛を自覚して救急要請.腹部CT検査にてfree airを認め,当科で緊急手術を施行.開腹すると,上部回腸が70cmにわたり狭窄と拡張を繰り返し,最も拡張した腸管壁の一部が菲薄化して穿孔していた.多発狭窄部位を含めた小腸部分切除を施行した.切除標本所見では,境界が比較的鮮鋭で浅く平坦な潰瘍が近接多発しており,病理組織学的検査では潰瘍はいずれもUL-IIまでにとどまる非特性の潰瘍であった.病歴,標本の特徴的な形態学的所見,また非特異的な病理所見などから,非特異性多発性小腸潰瘍症と診断された.本症は平成27年7月1日より難病法の施行の指定難病の一つである.今回,本症の長期経過において穿孔をきたした稀な1例を経験したので,若干の文献的考察を踏まえて報告する.