2018 年 79 巻 11 号 p. 2327-2331
症例は61歳,男性.心窩部痛・発熱を主訴に受診し,急性胆嚢炎の診断で抗菌薬治療が行われ退院した.待機的手術を目的に再入院し,腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた.術中に動脈を損傷し,鏡視下での止血を試みたが困難で,開腹止血した.術後14日目に直径2cmの右肝動脈瘤を認め,コイル塞栓術を施行し抗生剤治療後に退院した.本症例ではcaterpillar hump型の右肝動脈を認めた.これは1923年にFlintによって提唱された,頭側や尾側へ走行するコブを伴い曲がりくねった走行をする右肝動脈の異常のことである.この異常の頻度は多くはないが,決して稀ではなく,術中損傷の危険が高いため注意が必要である.また,胆摘後の肝動脈瘤も稀ではあるが,合併時は命に関わる合併症である.Caterpillar hump型の右肝動脈を伴い,術後に右肝動脈瘤を合併した腹腔鏡下胆嚢摘出術の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.