抄録
外科手術後に老人性鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(MRHE)をきたした2症例を報告する.1例目は75歳の男性で肝右葉切除後,2例目は72歳の女性で腹腔鏡下回盲部切除後,第1病日から第3病日にかけて20mEq/L程度の急激な血清ナトリウム値低下をきたし,意識消失を伴う低ナトリウム血症(Na 110mEq/L台)を発症した.血漿浸透圧低下,尿浸透圧上昇および抗利尿ホルモンが検出され,一見抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)の診断基準に合致したが,2例とも脱水を認めたためMRHEと判断し水分と電解質補充,2例目にはフルドロコルチゾンも使用して速やかに改善した.MRHEの病態は,加齢による腎のナトリウム保持機能低下と動脈硬化によるレニン分泌低下に伴う代償性の抗利尿ホルモン分泌による水貯留とされ,脱水が伴う点でSIADHと異なる.高齢者の周術期において,念頭に置くべき疾患と考える.