日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下胃全摘術を施行した噴門側胃切除後残胃癌の1例
藤田 悠介川田 洋憲青木 光北條 雄大久森 重夫牧 淳彦
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2018 年 79 巻 12 号 p. 2413-2418

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抄録

患者は5年前に胃癌に対し開腹噴門側胃切除術を施行された74歳の女性.2カ月前に残胃癌の診断となり,当院で腹腔鏡下残胃全摘術を施行した.噴門側胃切除後であり,幽門近傍の癒着は少なく通常の腹腔鏡下胃切除と同様の展開での操作が可能であった.膵上縁より頭側の大血管と残胃の癒着や吻合部周囲の癒着は強固であった.大血管周囲の剥離や腹部食道切離に伴う縦隔内の吻合に対して,内視鏡の拡大視により安全な操作が可能であった.術後経過は良好で,術後11日目に退院し,術後33日目より化学療法が施行可能であった.腹腔鏡下残胃全摘術は初回手術により癒着の状況が異なるため,内視鏡手術の十分な習熟と状況に応じた手順や展開が必要である.噴門側胃切除後では縦隔内操作が必要となり経裂孔操作時の安定した視野が得られることから,腹腔鏡手術は有用な選択肢であると考えられた.

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