抄録
症例は64歳,男性.発熱,右上腹部痛を主訴に近医より紹介となった.血液検査で炎症反応の上昇とCTで肝後区域に50mm大の辺縁不整な低吸収域を認め,肝膿瘍疑いで緊急入院となった.入院翌日に経皮経肝ドレナージを施行したところ,膿汁は吸引されずに血液のみ吸引され,さらに針生検検体による組織診において悪性を疑う異型細胞を認めたことから血管由来の腫瘍の可能性も疑われた.入院後より抗生剤加療を継続するも発熱・炎症反応の改善を認めず,肝機能は徐々に悪化した.肝病変が悪性腫瘍であれば肝切除が唯一の治療法と考え,入院後22日目に肝後区域切除,胆嚢摘出術を施行したが,根治切除にはならなかった.術後発熱・腹痛は一時改善したものの,術後25日目に死亡した.病理組織診断は肝血管肉腫であり,多核の破骨細胞様巨細胞の混在を認めた.肝血管肉腫に破骨細胞様巨細胞を認めた報告は自験例が最初であり,文献的考察を加えて報告する.