2018 年 79 巻 4 号 p. 808-813
症例は70歳,男性.肝機能障害の精査時に施行した腹部骨盤造影CT検査で,虫垂の腫大と造影効果を伴う盲腸の壁肥厚を認めた.大腸内視鏡検査では,虫垂開口部を取り囲む発赤した,正常粘膜に覆われた低隆起性病変を認め,虫垂腫瘍と診断した.内視鏡的生検では確定診断に至らず,画像診断も含めて悪性腫瘍の可能性を考慮し,回盲部切除術,D2郭清を施行した.切除標本では,虫垂開口部より末梢側2cmの虫垂に,径10mmの結節を認め,病理組織学的所見では紡錐形細胞が錯綜していた.免疫染色ではc-kit陽性,Ki-67 1-2%で,低リスクのgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.さらに,末梢側の虫垂には粘液嚢胞腺腫も認めた.虫垂GISTは,全GISTのうち約0.1%と非常に稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.