日本臨床外科学会雑誌
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症例
10年生存している多発肝原発神経内分泌腫瘍の1例
佐々木 優中場 寛行玉川 浩司吉川 浩之谷口 英治有馬 良一
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2018 年 79 巻 4 号 p. 858-863

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抄録

症例は55歳,女性.45歳時,貧血精査目的に当院紹介となり,CTにて肝全体に大小様々な腫瘤を多数認めた.全身精査するも肝以外に明らかな異常は認めず,肝生検にて神経内分泌腫瘍(NET)と診断した.他臓器に原発巣を疑う病変は認めなかったが,同腫瘍の中でも肝原発は稀で,肝内に多発して認めたことから転移性肝NETと診断した.本人希望にて経過観察となったが,10年後,右季肋部痛にて再受診された.CTでは右葉の約10cm大の腫瘤をはじめとして,以前認めた腫瘤は何れも増大していた.腹痛は増大した腫瘍によるものと考えられ,減量手術として肝右葉切除術,肝S4部分切除術を施行した.術後の全身精査でも残肝以外に病変を認めないことから,肝原発NETと診断した.肝原発NETは稀であり,原発か転移性かの判断に苦慮する.10年もの長きに渡り自然経過を観察しえた報告はほとんどなく,文献的考察を加え報告する.

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