抄録
症例は35歳,女性.半年ほど前から左鼠径部の膨隆を自覚し,痛みも伴った.近医を受診し,鼠径ヘルニアの診断で当科へ紹介となった.診察時は鼠径部に膨隆を認めず,超音波検査・CTでも所見を認めなかったが,本人の希望で腹腔鏡下手術の方針とした.まず,臍部より腹腔鏡を挿入し観察したが,鼠径部に腹膜陥凹を認めなかった.しかし,本人は痛みのある膨隆を自覚しており,TEP法にて腹膜前腔を観察することとした.バルーンにて腹膜前腔を剥離し検索したところ,塊状の脂肪組織が大腿ヘルニアの部位に嵌まり込んでおり,これを剥離すると径約2cmの筋膜欠損部が存在した.メッシュを用いてヘルニアを修復した.術後経過は問題なく退院した.術後1年となるが,症状の再発を認めていない.腹腔内を観察してヘルニア門が確認できない場合でも,明らかに症状のある症例では,sacless herniaを念頭に腹膜前腔を検索する必要がある.