日本臨床外科学会雑誌
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症例
出血性胆嚢炎により発症した平坦浸潤型胆嚢癌の1例
落合 洋介京兼 隆典河合 徹浅井 悠一久世 真悟馬場 聡
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2018 年 79 巻 8 号 p. 1764-1771

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抄録

症例は76歳の男性で,突然発症の心窩部痛のため当院救急搬送となった.単純CTで腫大した胆嚢内にCT値68.4 Hounsfield Unitの淡い高吸収域の物質を認めた.胆嚢出血を伴う急性胆嚢炎を疑い,絶食,抗生剤治療を開始した.2日後に再検した造影CTでは,胆嚢内の血腫は著明に減少していたが,胆嚢体部と底部にやや不正な限局性壁肥厚所見を認めた.造影MRIで壁肥厚部位に一致して粘膜不整があり,拡散強調画像では同部位が高信号域となった.以上より,胆嚢出血の原因として胆嚢癌の可能性も否定できなかったため,肝床切除を伴う胆嚢摘出術を施行した.術中迅速病理検査で漿膜下層までの浸潤を認める胆嚢癌と診断されたため,領域リンパ節郭清を追加した.病理組織学的診断では,平坦型の低分化腺癌であり,リンパ節転移は認められなかった.出血性胆嚢炎により発症した胆嚢癌症例はまれであり,文献的考察を加え報告する.

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