2019 年 80 巻 11 号 p. 2043-2049
症例は44歳,女性.両側卵巣腫瘍の疑いで左付属器切除術+右卵巣嚢胞核出術を施行し,腺癌{CK7(+),CK20(+),CDX2(-),ERα(-)}の診断となった.CT,上下部消化管内視鏡検査で病変を指摘できないため,卵巣原発の粘液性腺癌として追加切除を施行した.術中に小腸腫瘍を指摘され,小腸部分切除術を併施した.小腸病変からも腺癌を認め,前医卵巣腫瘍の組織所見と類似していることから,最終的には小腸癌の卵巣転移の診断となった.2年後に播種再発したが,Hartmann手術+播種切除術+小腸部分切除術を行い,根治切除となった.現在初回手術から4年2カ月が経過したが,新たな再発は認めていない.予後不良な病態でありながら長期生存を得ている稀な症例であり,病理組織学的考察を加えて報告する.