2019 年 80 巻 2 号 p. 356-361
症例は38歳の男性.左鼠径ヘルニア嵌頓に対する緊急手術から約2年後,検診で便潜血反応の異常を指摘され,数回の内視鏡検査の結果,S状結腸内に過去の手術時に使用されたクーゲル®パッチの一部が露出していることが判明した.自覚症状は無かったが,後に重篤な合併症を引き起こす可能性が高いと考え,根治術を施行した.まず腹腔鏡による観察で,左鼠径床とS状結腸の強固な癒着を確認し,剥離授動操作を進めた.そして,必要最小限の開腹を加え,鼠径床のクーゲル®パッチを含めてS状結腸切除を行った.術後1年以上経過したが,トラブルなく経過している.クーゲル®パッチによる消化管穿孔・穿通の症例報告は数例しか無く,極めてまれなケースであると思われた.術者は,術式や使用するメッシュの形状に関わらず,このような重篤な合併症が起こり得ることを念頭に置いて治療にあたるべきである.