日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した腎細胞癌膵転移の1例
若林 哲司内田 恒之小山 英之塩澤 敏光木川 岳田中 邦哉
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2019 年 80 巻 5 号 p. 983-989

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抄録

症例は81歳,男性.右腎細胞癌に対して右腎摘出術と術後インターフェロン療法が施行された.術後2年目に右肺転移を指摘され,肺部分切除術を行い以降無再発で経過したが,初回術後5年目の腹部CT検査で径約20mmの膵体部腫瘤が確認された.腎細胞癌膵転移と診断し,膵以外の他臓器転移は認めないことから切除の方針とし,閉塞性換気障害を認めたことから腹腔鏡下膵体尾部切除術を選択した.病理診断は淡明細胞癌であり,先の腎細胞癌の病理所見と酷似しており腎細胞癌膵転移と最終診断した.術後10日で合併症なく軽快退院し,膵切除後3年経過した時点で再発は認めていない.腎細胞癌の膵転移は晩期再発が多く切除による予後の改善が期待できる.また,系統的リンパ節郭清が不要であることから腹腔鏡下でのアプローチで根治性は保たれると考えられ,高齢で呼吸器併存疾患を認めるような症例には有効な治療アプローチであると考えられた.

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© 2019 日本臨床外科学会
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