2020 年 81 巻 1 号 p. 36-40
今回われわれは,乳房温存術後に発生した放射線誘発性血管肉腫を2例経験した.症例1は86歳の女性で,79歳の時に左乳癌にてBp+Axと術後放射線治療を施行した.術後7年目に左前胸部のしこりと出血を主訴に受診し,針生検で再発と診断されたためweekly paclitaxel+bevacizumabを開始した.有害事象で治療継続困難であり,左乳房単純切除術と皮膚広範切除術を施行したが,術後病理学的診断では血管肉腫と診断された.術後1カ月目に局所再発を発症したがBSCの方針となり,再発3カ月後に死亡した.症例2は67歳の女性で,61歳の時に左乳癌にて術前化学療法後にBp+Axと術後放射線治療を施行した.術後6年目,左前胸部に皮疹を認め同部位の皮膚生検にて血管肉腫と診断されたため,左乳房単純切除術と植皮術を施行した.術後1年無再発である.乳癌術後から血管肉腫発生までの期間から,本2症例は放射線誘発性と考えられた.本疾患は予後不良な希少疾患であり,文献的考察を加えて報告する.