日本臨床外科学会雑誌
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症例
術後に重症筋無力症を発症した抗アセチルコリン受容体抗体陽性胸腺腫の2例
幾島 拓也大竹 節之田畑 佑希子武藤 潤大野 耕一
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2020 年 81 巻 10 号 p. 1999-2003

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抄録

背景:胸腺腫の手術において,術前に重症筋無力症の症状を伴わず術後に症状が出現する症例が報告されている.症例1:54歳,女性.術前抗アセチルコリン受容体(AchR)抗体は8.7nmol/lと高値であった.胸腺腫に対して胸腺摘出術を施行,術後経過は良好で外来にて経過観察となっていたが,術後2年の段階で胸腺腫の再発を疑われた.同時期に嚥下障害等を認め,重症筋無力症の診断となった.ステロイドパルス療法・免疫吸着療法にて症状は改善した.症例2:76歳,女性.術前抗AchR抗体は70nmol/lと高値であった.胸腺腫に対して胸腺摘出術が施行されたが,術後早期に筋力低下や呼吸困難等により体動困難となり重症筋無力症の診断となった.ステロイドパルス療法・免疫吸着療法を経て症状は改善した.結論:2症例共に術前抗AchR抗体が陽性であり,術前の抗アセチルコリン受容体抗体陽性例は術後の重症筋無力症の発症により一層留意すべきである.

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