2020 年 81 巻 11 号 p. 2177-2185
症例は70歳の女性で,直腸癌術後,左肺癌術後,膵管内乳頭粘液性腺癌術後のCTで右腋窩リンパ節腫大の増大を認めたが,胸・腹部には明らかな異常所見は認めなかった.上・下部内視鏡では明らかな進行癌は認めなかった.マンモグラフィでは,両側乳房ともカテゴリー1であった.乳房超音波でも右腋窩部,右鎖骨下に腫脹したリンパ節が散見されるのみであった.全身PETでは右腋窩部,右鎖骨下のリンパ節にFDGの高集積を認めるのみであった.右腋窩リンパ節生検を施行し,乳癌からの転移が最も疑われた.潜在性乳癌を疑い造影MRI・乳房専用PETを施行したが,両乳房とも悪性所見は認めなかった.根治的郭清は困難と考え,TC療法+放射線療法+内分泌療法を継続することとした.造影MRI・乳房専用PETなどの画像上でも乳腺内病変を指摘しえない潜在性乳癌が疑われる場合には,乳房非切除+集学的治療も選択肢の一つと考えられた.