日本臨床外科学会雑誌
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症例
噴門側胃切除・ダブルトラクト再建術後のY脚吻合部逆行性腸重積の1例
田口 大輔松山 仁中島 慎介太田 勝也池永 雅一山田 晃正
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2250-2254

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抄録

症例は81歳の女性であり,腹痛,嘔吐の症状のため受診した.来院10カ月前に,他院で食道裂孔ヘルニアに対し開腹噴門側胃切除・ダブルトラクト再建術を施行されていた.来院時には腹部診察で心窩部から左側腹部にかけて強い圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.血圧低下,頻脈などのショック症状に加え,血液検査で炎症反応値と血中乳酸値の上昇を認めた.腹部造影CTではダブルトラクト再建術のY脚吻合部に肛門側空腸の重積を認め,同部位の造影不良を伴っていた.腸管壊死を伴う腸重積と診断し,緊急開腹手術を施行した.手術所見では,肛門側腸管がY脚吻合部で輸入脚空腸と挙上空腸との双方に逆行性に重積しており,重積部位の腸管壊死を認めたため小腸部分切除術を行った.逆行性腸重積はまれな病態であり,かつ噴門側胃切除・ダブルトラクト再建術後に生じた報告例は認めない.まれな病態を呈した自験例について,文献的考察を加えて報告する.

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