2020 年 81 巻 11 号 p. 2244-2249
症例は50歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に近医を受診,造影CTにて上腸間膜動脈(SMA)閉塞症の診断となり,当院救急外来に搬送された.造影CTにてSMAの血流は中結腸動脈分岐後より途絶していたが,発症早期であったことから血管内治療(IVR)を試みた.血栓吸引療法を施行し血流再開を確認,その後ウロキナーゼによる血栓溶解療法,バルーン拡張術を施行,再閉塞予防と微小血栓溶解目的に経カテーテル的にウロキナーゼの持続動注を継続した.翌日の造影CTにてSMAの再閉塞は認めなかったものの,回腸の浮腫状変化および採血にて炎症反応高値が遷延したため,診断的腹腔鏡手術を施行,腹腔鏡下に全小腸および盲腸,上行結腸の色調と蠕動運動が良好であることを確認し,腸切除を施行せずに手術を終了した.術後経過は良好で第12病日に軽快退院した.血栓吸引療法を含めた術前IVRと診断的腹腔鏡を用いて安全に腸切除を回避しえたSMA閉塞症を経験したので,文献的考察を加えて報告する.