2020 年 81 巻 11 号 p. 2290-2296
症例は38歳,女性.背部痛を主訴に近医を受診し,後腹膜腫瘍を指摘された.針生検から消化管由来腺癌の傍大動脈リンパ節転移が疑われ,当院へ紹介となった.1歳時にHirschsprung病(HD)に対し結腸亜全摘術,池田式Z型吻合による再建を施行された.術前検査では再建腸管の吻合部近傍に憩室を認め,右卵巣に接する憩室内腫瘍を指摘された.生検では中分化腺癌を認め,憩室内大腸癌と診断した.Stage IV大腸癌の治療に準じFOLFOXIRI療法を10コース施行した.腫瘍縮小により転移巣を含めた根治切除が可能と考え,腹腔鏡下直腸切断術・両側付属器切除・傍大動脈リンパ節郭清を施行した.術後は補助化学療法を施行し,現在再発なく14カ月経過している.憩室内大腸癌の多くは進行した病状で診断され,外科手術を含む集学的治療が必要とされる.われわれは,HD術後の長期経過中に再建腸管内の憩室に大腸癌を発症した稀な1例を経験したので報告する.