日本臨床外科学会雑誌
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症例
閉鎖孔ヘルニア嵌頓術後遺残膿瘍の1例
真智 涼介山崎 祐樹浦出 雅昭
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2362-2366

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抄録

症例は89歳,女性.食思不振・倦怠感を主訴に内科へ入院中であった.発熱精査のCTにて右閉鎖孔ヘルニア嵌頓とヘルニア嚢内の液体貯留を認めたため当科へ紹介となり,緊急手術を施行した.腹腔鏡下に腹腔内を観察すると,右閉鎖孔に回腸がRichter型に嵌頓していた.癒着を剥離し回腸を還納すると,嵌頓部に壊死および穿孔を認めた.臍部を小切開し回腸を体外で部分切除した.ヘルニア門は腸液による汚染がありメッシュでの修復は行わず,閉鎖孔の単結節縫合を試みた.しかし,炎症で組織は脆弱であり,卵管・卵巣間膜を縫着した.術後11日目に発熱があり,翌々日より右下肢の著明な浮腫を認めた.造影CTでは右閉鎖孔から骨盤腔に膿瘍を認め,遺残膿瘍と診断し,切開ドレナージを施行した.膿瘍の縮小と共に下肢浮腫も改善した.閉鎖孔ヘルニア嵌頓術後に,下肢浮腫を契機に大腿部膿瘍と診断したまれな症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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