日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下に診断と治療を行った鼠径ヘルニア偽還納の1例
中村 崇宣吉田 茉実鈴木 翔輝貝羽 義浩
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2020 年 81 巻 11 号 p. 2356-2361

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抄録

症例は83歳,男性.3日前からの腹痛,嘔吐を主訴に近医を受診した.腸閉塞が疑われたが,その日は浣腸を施行し排便が得られたため帰宅となった.翌日も症状が続くため近医を再度受診し,腹部X線検査にてniveauを認めたため腸閉塞の診断にて当院へ救急搬送された.当院で施行した腹部造影CTにて絞扼性腸閉塞の診断となり,同日緊急手術を施行した.腹腔鏡にて腹腔内を観察すると,左内側臍襞の外側に小腸が嵌頓した嚢状の構造を認め,ヘルニア偽還納と診断した.腸管の壊死所見は認めなかったため腸管切除は行わず,腹腔鏡下にヘルニア修復術を施行した.ヘルニア偽還納は腸管が嵌頓した状態で腹膜前腔に還納される,まれな病態である.緊急性を要する状態であり,ヘルニア偽還納という病態を認識しておくことは重要である.

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