2020 年 81 巻 3 号 p. 473-478
症例は86歳,男性.肺炎の診断で内科にて加療していたが,難治性のため特発性器質化肺炎が疑われ,第22病日よりステロイド治療が行われた.その後,臨床所見は改善したが,第31病日の胸部X線検査で腹腔内遊離ガス像を認めた.同日施行された腹部CTで腹腔内遊離ガスに加え胃壁内に気腫像を認め,外科へ転科となった.腹部症状はなく,全身状態の悪化も認めなかったため,十分な観察下に保存的治療を開始した.その後も全身状態に変化はなく,発症5日目の腹部CTで胃壁内気腫の消退と腹腔内遊離ガスの減少を確認した.発症6日目の上部消化管内視鏡検査では,胃体中部にびらん性胃炎を認めたが,粘膜壊死や潰瘍形成は認めなかったため,徐々に経口摂取を開始し回復期病棟へ転床となった.胃気腫症はまれな疾患で,なかでも薬剤に起因する症例や腹腔内遊離ガスを伴う症例の報告は少ないため,若干の文献的考察を加えて報告する.