2020 年 81 巻 4 号 p. 640-645
今回われわれは,脳転移を伴うHER2陽性転移性乳癌に対してlapatinib+capecitabine(LC)療法を施行し,約9年のlong CRとなった症例を経験した.そこで,2009年7月~2019年4月までに脳転移を伴うHER2陽性転移再発乳癌に対して,当院にてLC療法を施行した16例について,その有効性と安全性について後方視的に検討した.なお,脳転移診断後,全例で局所療法(2例:外科的切除,14例:放射線療法)を施行した後にLC療法を開始した.全体の治療効果はCR:2例(12.5%),PR:8例(50.0%),SD:1例(6.2%),PD:3例(18.8%),NE:2例(12.5%)で,奏効率は62.5%(10/16),TTP中央値は8.9カ月,OS中央値は13.6カ月と良好であった.経口で簡便に施行できるLC療法はHER2陽性転移再発乳癌,特に脳転移を伴う症例では必ず使用するべき薬剤と考える.