2020 年 81 巻 5 号 p. 860-865
症例は64歳,男性.上腹部の膨満感が持続するため近医を受診.腹部エコー検査にて腹部腫瘤を指摘され当院紹介となった.上部消化管内視鏡検査では残胃の噴門下前壁に多発潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認め,生検結果からGISTと診断された.CTでは左上腹部に長径20cmの腫瘤を認め,周囲臓器への浸潤も疑われた.術前化学療法の方針とし,イマチニブ400mg/day投与を開始した.投与開始19日目のCTでは腫瘍壊死と胃内腔への穿通が認められ,切迫破裂の危険性が高いと判断し緊急手術を施行した.術中所見では腫瘍破裂は確認されなかったが,肝左葉,横隔膜,脾臓,膵尾部との癒着が強固であり,合併切除となった.術後経過は良好で,術後11日目に軽快退院となった.GISTに対する術前化学療法は完全切除につながるため有用と思われるが,重篤な合併症も生じ得るので慎重に経過観察すべきである.