2020 年 81 巻 6 号 p. 1065-1068
授乳期乳房に発生した転移性腫瘤の1例を経験したので報告する.41歳授乳期女性の左乳房真皮直下に超音波診断上7mm大の血流に乏しい腫瘤性病変を認めた.穿刺にて得られた少量の白色の液体は,検鏡にて無構造の蛋白様物質が多量に含まれ軽度の異形を有する角化を伴う細胞がごく少数認められたが,乳管腺上皮は含まれていなかった.この時点で悪性腫瘍を強く疑ったわけではないが,増大したことから外科生検を行い,浸潤性乳管癌(硬癌)との診断を得た.精査を進めたところ,CT,MRI(Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background Suppression;DWIBS)にて左肺に空洞を伴う7cm大の腫瘤を認め,EGFR遺伝子変異陽性の扁平上皮癌で髄膜,腎,皮膚に転移の見られる4期と判明した.乳癌との関連を調べる目的で乳房腫瘤の組織像を再度複数の病理診断医と協議した結果,乳房の腫瘤も肺扁平上皮癌からの転移性腫瘍としても矛盾しないこと,遺伝子検査の結果,肺腫瘍と同じEGFR変異(exon19del)が認められたことから,最終的に肺癌の乳房転移と診断した.