日本臨床外科学会雑誌
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症例
保存的治療で軽快した門脈ガスを伴う広範囲腸管気腫症の1例
中上 勝一朗東 重慶出村 公一梶原 淳金 浩敏種村 匡弘
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2020 年 81 巻 7 号 p. 1302-1306

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抄録

60歳,女性.幽門狭窄を伴う切除不能進行胃癌に対し,化学療法S-1+CDDP(SP療法)を開始した.化学療法開始日から20日目より下痢・嘔吐が出現し,脱水の進行も認めたため入院となった.腹部造影CTにて食道から胃,小腸の広範囲にわたり壁内ガスを認め,門脈ガスも認め腸管嚢胞様気腫症と診断した.腹部膨満感はあったが,発熱はなく腹痛は軽度であったため保存的治療にて経過観察した.第12病日には気腫像は著明に改善し,第35病日に幽門狭窄に対し胃-空腸バイパス術を施行し退院となった.退院後2クール目のSP療法を追加したが腸管嚢胞様気腫症の再燃は認めなかった.

門脈ガスや腹腔内遊離ガスを伴う腸管嚢胞様気腫症は,消化管穿孔や腸管壊死を強く疑う所見であり緊急手術を第一選択とする.今回われわれは,門脈ガスを伴った広範囲腸管嚢胞様気腫症に症例に対し保存的治療で軽快した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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