日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
腹直筋皮弁を用いて閉鎖した術後難治性小腸皮膚瘻の1例
清水 篤志望月 靖史森 一洋高橋 道郎真栄城 剛宮本 幸雄
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 81 巻 7 号 p. 1307-1312

詳細
抄録

開腹手術後の合併症として稀に生じる腸管皮膚瘻は,治療に苦慮する病態の一つである.保存的治療困難な小腸皮膚瘻を腹直筋皮弁にて閉鎖した1例を経験した.症例は幽門側胃切除Billroth II法再建の手術既往を有する68歳の男性.胆嚢結石症および総胆管結石症の診断で,内視鏡的総胆管結石除去術を行った1カ月後に開腹胆嚢摘出術を施行した.腹腔内に高度癒着を認め,癒着剥離時に損傷した小腸を修復した.術翌日に汎発性腹膜炎・敗血症となり再手術を行った.十二指腸穿孔を認め,縫合修復した.術後12日目に正中創が離開し腸液の漏出を認めた.創処置および栄養管理による保存的治療を継続したがhigh-outputの唇状空腸皮膚瘻を形成した.自然閉鎖困難と考え,腸液漏発生100日後に非開腹下に腹直筋皮弁による閉鎖術を行った.その後の経過は良好で,3週間後に自宅退院となった.難治性小腸皮膚瘻の治療として本術式は有用な治療選択の一つと考えられた.

著者関連情報
© 2020 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top