日本臨床外科学会雑誌
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症例
3カ所の回腸瘻を形成した直腸S状部癌の1例
中本 健太郎寺岡 均木下 春人長谷川 毅
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2020 年 81 巻 7 号 p. 1353-1358

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抄録

症例は68歳,女性.便秘の精査目的で近医にて施行された腹部単純写真,大腸内視鏡検査で直腸S状部の腫瘍と腫瘍による腸閉塞と診断され,当院に紹介となった.腸閉塞に対し経肛門的イレウス管による減圧を行い,また腫瘍部の生検にて直腸S状部癌と診断された.手術所見では腫瘍が回腸の3カ所にわたり浸潤しており,開腹高位前方切除術,回腸部分切除術,回腸人工肛門造設術を行った.摘出標本で回腸浸潤部の3カ所で瘻孔形成も認めた.最終診断はpT4b(回腸) pN1a cM0 Stage IIIcであった.術後補助化学療法を行い,術後1年で無再発生存中である.大腸癌による小腸瘻は比較的稀な病態であり,同時に複数カ所の小腸瘻を形成することは極めて稀である.今回,われわれは3カ所の回腸瘻を形成した直腸S状部癌の1例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.

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