日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
ポリスチレンスルホン酸塩の関与が疑われた反復性S状結腸穿孔の1例
高橋 朋大木原 恭一原 和志谷尾 彬充山本 学藤原 義之
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 81 巻 7 号 p. 1346-1352

詳細
抄録

84歳,男性,糖尿病性腎不全,高K血症のため,ポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)の内服あり.左下腹部痛で救急外来を受診した.CTでS状結腸周囲に遊離ガス像を認め,S状結腸穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術となった.術中所見でS状結腸に硬便が露出する母指頭大の穿孔を認め,Hartmann手術を行った.術後6日目に腹痛の再燃があり,CTから人工肛門脚部の再穿孔と診断した.再開腹すると,人工肛門の10cm口側結腸に再穿孔を認めた.人工肛門から再穿孔部まで切除し,人工肛門を再造設した.組織学的に穿孔部には炎症性細胞浸潤を伴った好塩基性多角形結晶様異物が析出しており,CPSによる修飾が強く疑われた.CPSを内服している患者の大腸穿孔は慢性腎不全と併存する全身性疾患から致命的となりやすく,再穿孔を回避するために積極的な硬便摘出や腹壁貫通部を大きくとるといった外科的工夫が肝要である.

著者関連情報
© 2020 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top