2020 年 81 巻 7 号 p. 1375-1379
症例は57歳の男性.2012年頃から健診で胆嚢の壁肥厚を指定されていたが,無症状であり血液検査で異常がないことから経過観察となっていた.2018年に,肝機能異常を契機に診断的治療を勧められ,同年8月に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.通常の外観を呈する胆嚢を開放したところ,本来の胆嚢と思われた嚢状構造内側壁の一部に管腔構造が付属しており,この管腔構造のみが胆嚢管に連続していた.嚢状構造と管腔構造の間には交通があったと思われ,両者の間には胆汁と思われる淡緑色で混濁した漿液性の液体貯留が観察された.肉眼的には重複胆嚢1)が考えられたが,組織学的には嚢状構造と管腔構造との癒合部だけに通常の胆嚢の全層構造を認め,嚢状構造部には漿膜および漿膜下層だけが観察された.細い管腔構造の諸処に,増生・破綻したRokitansky-Aschoff sinus2)が観察されたことより,胆嚢腺筋腫症を契機に胆嚢壁解離をきたしたものと推察された.