日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵・肝転移を切除した右上顎部悪性黒色腫の1例
門 威志古川 健太三賀森 学浅岡 忠史岸 健太郎赤松 大樹坂井 浩志
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キーワード: 悪性黒色腫, 膵転移, 切除
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2020 年 81 巻 7 号 p. 1397-1401

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抄録

症例は56歳,女性.2014年に右上顎悪性黒色腫に対し腫瘍切除術を施行した.術後局所再発に対し二度の腫瘍切除とINF-β局所療法を施行した.2018年2月のCTにて膵鈎部に腫瘤を認め,転移を疑った.PET-CTにて膵以外に遠隔転移を疑う集積はなく根治切除可能と判断し,膵頭十二指腸切除術(PD)を予定した.開腹時,肝S4表面に2箇所の結節を認めたが,他に播種,転移を認めず肉眼的根治切除可能と判断し,肝部分切除およびPDを施行した.病理組織診断では悪性黒色腫の膵,肝転移であった.悪性黒色腫の膵転移は予後不良とされているが,近年では抗PD-1抗体の有効性が報告されており,手術と化学療法を組み合わせることで長期生存が得られたとの報告もある.本症例でも術後より化学療法を導入し,術後2年が経過した現在も生存中である.本症例のように膵・肝に転移があっても完全切除可能と判断できる症例では,切除を行い化学療法を追加することが予後改善につながる可能性がある.

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