2021 年 82 巻 10 号 p. 1783-1793
腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術は大きなパラダイムシフトを迎えた.すなわち,テンションフリー修復術からヘルニア門縫合閉鎖による腹壁機能の再建,メッシュ関連合併症や腹壁との固定を最小とするため腹腔内から腹膜外への修復層の変化である.Novitskyらの報告したtrasversus abdominis muscle release (TAR)は,開腹手術のゴールデンスタンダードであるRives-Stoppa法の限界を克服し,巨大ヘルニアに対する腹壁再建を可能とした歴史的術式である.そして,eTEPやEMILOSといった新たな術式の登場により開腹手術と同様のコンセプトで腹壁再建,腹膜外メッシュ留置が鏡視下手術でも可能となった.
本稿では1993年,LeBlancにより初めて報告された腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術の歴史と術式の変遷,そして,最新の動向について解説する.