2021 年 82 巻 10 号 p. 1837-1843
症例は86歳,男性.腹痛,血尿等を主訴に受診.腹部CTにて小腸に浮腫状の壁肥厚や著明な腸管膜浮腫を認め,骨盤底に血性と思われる高吸収腹水が貯留しており,絞扼性腸閉塞が否定できなかった.血液検査でAPTT・PTが著しく延長していたため,輸血による凝固因子補充を行いながら臨時手術の方針となった.小腸壁内および腸間膜内に出血・血腫を認め,所見のある小腸を部分切除した.術後精査にて第V因子インヒビターによる凝固異常と診断され,大量輸血,血漿交換,免疫抑制療法等で加療したが,治療効果はみられなかった.凝固障害の改善を認めないまま,経過中に頭蓋内出血をきたし,術後12日目に永眠した.今回,後天性第V因子インヒビターにより著しい凝固異常を呈したため,小腸壁内および腸間膜内に出血,血腫を形成し,絞扼性腸閉塞との鑑別を要した1例を経験したため報告する.