2021 年 82 巻 10 号 p. 1832-1836
症例は75歳,男性.2019年に当院で両側鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair;以下,TAPP)を施行した.術後7日目に嘔吐を主訴に来院した.CTでは左鼠径部を起点とした腸閉塞を認め,術後癒着性腸閉塞と診断し,経鼻イレウス管を留置して減圧を行った.減圧後も閉塞が解除されなかったため手術を施行した.腹腔鏡下に閉塞部を観察すると,左鼠径部の腹膜縫合部内側端が離開しており,露出したメッシュに小腸が癒着していた.メッシュは除去せずに小腸の癒着剥離と腹膜離開部の再縫合を行った後に癒着防止剤を留置して手術を終了した.癒着剥離した小腸の切除は不要であった.TAPP術後は腹膜縫合部の離開に伴う腸閉塞をきたす可能性があるため,隙間なく強度のある閉鎖を心掛ける必要がある.