2021 年 82 巻 10 号 p. 1898-1904
症例は78歳,女性.臀部皮膚腫瘍切除術を施行,血管腫と診断された.同時期のCTで右肺下葉に結節性病変を指摘され,増大したため肺部分切除術を施行.病理診断は血管腫であったが,臀部病変との関連は明らかでなかった.初回手術から1年後のCTで肝右葉腫瘤を認め,経時的な増大を認めたことから右葉切除を計画し,残肝容量不足のため,開腹門脈右枝結紮と腫瘍生検を施行した.
病理診断は血管肉腫であり,臀部病変からの肺,肝転移と診断した.術後19日目に出血性ショックとなり,肝腫瘍の著しい増大と腫瘍内出血を認めた.播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発し,術後56日で死亡した.剖検で肝全体に多発する血管肉腫を認め,直接死因は肝不全とKasabach-Merritt症候群に伴うDICと判断した.
血管肉腫の好発部位は頭頸部であり,体幹部は発生頻度も少なく予後は比較的良好とされる.複数臓器に転移して急激な転帰を辿ったまれな臀部原発血管肉腫を経験したため,文献的考察を加えて報告する.