2021 年 82 巻 11 号 p. 2028-2031
症例は72歳,女性.血便,左下腹部痛を主訴に当院内科を受診した.腹部造影CTでS状結腸に多発する憩室を認め,その一部より連続して高吸収域が左付属器近傍に広がり,内部に低吸収域および腸管外ガスを伴っていた.S状結腸憩室炎による子宮付属器領域への穿通および膿瘍形成と診断し保存的治療を開始したが,CTで腸管外ガスおよび膿瘍形成が持続していたため,S状結腸部分切除および左付属器切除術を施行した.病理組織学的にはS状結腸の漿膜下を主体に仮性憩室の破綻と炎症細胞胞浸潤を認め,左卵巣には好中球の集簇からなる膿瘍形成および異物型多核巨細胞を認めた.術後経過は良好で,術後16日目に退院となった.今回われわれは左子宮付属器に穿通し,卵巣膿瘍を併発したS状結腸憩室炎の1例を経験した.極めて稀な症例と思われ,若干の文献的考察を行い報告する.