日本臨床外科学会雑誌
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症例
pCR後9カ月で脳転移により死亡したトリプルネガティブ乳癌の1例
藤井 雅和野島 真治林 雅太郎金田 好和須藤 隆一郎田中 慎介
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2021 年 82 巻 12 号 p. 2113-2122

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抄録

症例は39歳の女性で,右乳癌,invasive ductal carcinoma,トリプルネガティブ,MIB-1 labeling index約80%,T2,N1,M0,stage IIBと診断された.術前化学療法としてEC4クール,続いてweekly paclitaxelを12クール施行した.その後の造影CTで,画像上partial response(以下PR)であった.根治的手術が可能と判断し,右乳房切除術+腋窩リンパ節郭清(Level II郭清)を施行した.病理組織学的診断上pathological complete response(以下pCR)と診断した.術後半年のCTおよびMRIで,右側頭葉に約26mmの脳転移を認めた.脳転移が1カ所で他の臓器にも転移性病変を認めないことから,頭蓋内腫瘍摘出術が施行され,その後全脳照射が開始されたが,脳腫瘍摘出の2カ月後に死亡した.乳癌患者の多くは潜在的に微小な脳転移をきたしている可能性があると考えられ,その結果,術前化学療法で脳以外の腫瘍部分には顕著に奏効したが,血液脳関門によって通過しなかった抗癌剤は脳転移を抑制できず,術後に顕在化してきたと考えられた.

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