2021 年 82 巻 12 号 p. 2136-2140
症例は72歳の男性.狩猟中に山の急斜面で滑落し,胸背部を打撲した.CTで左第9~11肋骨骨折と軽度の左外傷性血胸を認め,入院経過観察した.受傷後12時間以上経過した翌朝,嘔吐と血圧低下,CTで左血胸の増悪を認め,左胸腔ドレナージで2,000ml以上の血性排液を認めたため,止血目的に緊急手術を行った.術中,胸部大動脈にピンホール大の出血点があり,縫合止血した.大動脈の損傷は,近傍にあった肋骨骨折端によるものと考えられた.止血後,循環動態は安定し,全身管理の後,受傷日より14日目に自宅退院となった.胸部外傷後に生じる血胸は,肋骨骨折に伴う肋間動脈の損傷が原因となることが多い.本症例のように大動脈損傷が原因となる例は稀だが,対応が遅れた場合,致死的な経過となる.胸部外傷後,特に左背部の肋骨骨折後の血胸の例では,大動脈損傷の可能性を考える必要がある.