日本臨床外科学会雑誌
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症例
化学療法後に完全切除できた胸部平滑筋肉腫(長径16cm)の1例
澤野 武行橋本 直樹木村 昭利梅原 豊村田 暁彦黒滝 日出一袴田 健一
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2021 年 82 巻 12 号 p. 2141-2148

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抄録

胸壁平滑筋肉腫はまれな疾患である.今回われわれは化学療法後に完全切除した16cm大の胸部平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.症例は54歳,男性.左前胸部腫瘤を主訴に受診した.針生検の結果は非上皮性悪性腫瘍だった.術前精査にて胸壁浸潤が疑われ術前化学療法を行ったが,治療効果が得られず手術を行った.胸壁合併切除が必要と考えたが,術中所見では明らかな浸潤を認めず腫瘍切除のみ行った.断端陽性の可能性があり,一期的に再建せず皮膚欠損部を人工真皮で被覆し手術を終えた.病理組織診断にて断端陰性を確認し,有茎広背筋皮弁,分層植皮にて二期的に再建した.病理組織診断結果は平滑筋肉腫だった.術前化学療法により腫瘍の約50%が変性,壊死していた.術後広背筋皮弁,植皮部位に一部生着不良を認め再手術を要したが,その後創傷治癒が得られ退院した.外来にて術後化学療法を行い,初回術後3年5カ月経過し無再発生存中である.

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