日本臨床外科学会雑誌
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症例
発見から17年後に急速増大した胸膜原発悪性孤立性線維性腫瘍の1例
成澤 英司尾林 海中澤 世識大瀧 容一矢島 俊樹前原 龍郎伊古田 勇人調 憲
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2021 年 82 巻 12 号 p. 2149-2155

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抄録

孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:SFT)は間葉系細胞由来の比較的稀な腫瘍である.今回われわれは,発見から17年後に急速増大をきたした悪性SFTの1例を経験した.症例は74歳,男性.17年前に胸膜結節および前縦隔結節を指摘されたが治療希望なく経過観察がされ,1年前より急速増大をきたし手術切除を行った.胸膜病変は肺表面から連続する腫瘤で,腫瘍を含めて肺部分切除を行った.病理所見ではCD34(+)の紡錘形細胞が主体であり,核異型,分裂像およびMIB-1 index高値を認め,臓側胸膜由来の悪性SFTと診断した.前縦隔結節はA型胸腺腫だった.本症例のSFTは経過観察中に急速増大をきたし悪性転化した可能性が考えられたが,比較的小径でFDG集積も乏しかった.SFTの多くは増大緩徐で予後も良好だが,10-30%は悪性で,術前の良悪性の鑑別は困難と考えられるため,疾患を疑った時点での手術切除も検討し得る.

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