2021 年 82 巻 12 号 p. 2163-2169
症例は78歳,男性.腹部不快感を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部の腫瘤性病変を指摘され当院へ紹介となった.血清総蛋白・アルブミン値(TP・Alb)は4.1・1.7g/dlと低下し,上部消化管内視鏡検査では胃前庭部に全周性の1型腫瘍とその口側に連続した広範な0-II a病変を認め,生検で乳頭状腺癌,高分化腺癌と診断した.術前CTでは多量の腹水貯留と胸水貯留を認め,術前診断cT4a(SE),cN+,cM0or1,cStage III or IVと判断し,幽門側胃切除術(D2リンパ節郭清),Roux-en-Y再建を施行した.腹腔内には乳糜腹水が多量に貯留していたが腹水細胞診は陰性であった.病理組織学診断はpT1b,pN0,M0,pStage I Aの結果であった.術後経過は良好で,TP・Alb値の経時的な改善を認めた.腹水貯留により進行癌が疑われた蛋白漏出性早期胃癌の症例を経験した.