日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前CTで左門脈・左副肝動脈・腹腔動脈起始部閉塞を認めた早期胃癌の1例
光岡 英世谷川 優麻口分田 亘小松原 隆司古角 祐司郎
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2021 年 82 巻 12 号 p. 2170-2175

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抄録

症例は77歳,男性.頸部の違和感を主訴に当院を受診した.上部消化管内視鏡検査にて胃体下部大彎に早期胃癌を認め内視鏡的粘膜下層剥離術を行ったが,内視鏡的根治度C2となり追加切除を行う方針となった.術前の腹部造影CTにて左胃静脈が門脈臍部に流入しており,左門脈と診断した.また,左胃動脈から分岐する左副肝動脈も認め,腹腔動脈の根部閉塞による膵頭部のアーケードの異常発達も認めた.腹腔鏡下幽門側胃切除術,D1+郭清を施行した.その際,術後の肝血流低下を防ぐため前上膵十二指腸動脈を損傷しないよう留意し,左副肝動脈は温存した.左胃静脈は肝胃間膜内で左副肝動脈と伴走しており,左副肝動脈分岐部近傍で切離した.術後は軽度の肝酵素上昇を認めたが,問題なく経過した.非常にまれである左門脈に加えて,留意すべき血管分岐,形態異常を伴う手術例を経験したので報告する.

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