日本臨床外科学会雑誌
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症例
USが治療指針となり保存的治療が奏効した非閉塞性小腸虚血の1例
蓬萊 春日三宅 秀夫永井 英雅吉岡 裕一郎柴田 耕治湯浅 典博
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2021 年 82 巻 12 号 p. 2217-2224

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抄録

症例は78歳の女性で,意識障害を主訴に当院を受診し敗血性ショックと診断され,ICUに入室した.来院時血液生化学検査で炎症反応上昇,肝・腎機能障害を認めた.造影CTで下部小腸壁に浮腫状肥厚と造影不良を,3D-CT angiographyで小腸の辺縁動脈の造影不良を認めたため,非閉塞性腸管虚血(NOMI)と診断した.ICU入室18時間後,血液検査で炎症反応,肝・腎障害の増悪を認めたため,腸管壊死を強く疑った.同時に施行したUSでは下部小腸の壁肥厚と壁内気腫を認めたが,color Doppler USではその小腸壁に拍動性血流シグナルを認めたため保存的治療を続行した.その後の経時的USで小腸壁の拍動性血流シグナルは保たれ,壁内気腫も軽減した.入室8日目にICUを退室し,37日目に自宅に退院した.本症例ではNOMIの治療方針の決定にUSが有用であった.

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