2021 年 82 巻 12 号 p. 2252-2256
腹部大動脈瘤(以下AAA)を合併した下行結腸癌に対する腹腔鏡手術では,結腸の受動と吻合部の血流に注意を要する.症例は83歳,男性.下行結腸癌(cT3N0M0:cStage II a)の診断で手術の方針としたが,術前CTで径51mmの嚢状AAAを認めたため二期手術の方針とした.ステントグラフト内挿術(以下EVAR)を先行し,1カ月後に腹腔鏡下結腸切除術を施行した.AAAの損傷回避から内側アプローチは行わず,外側および頭側から左側結腸を受動し小開腹下に切除再建を行った.吻合部の血流を考慮して郭清はD1に留めた.大きな合併症無く,術後第14病日に退院した.AAAと下行結腸癌が同時性に発見された1例に対し,二期的にEVARおよび腹腔鏡手術を施行した.AAAに注意した結腸の受動とEVAR後の下腸間膜動脈閉塞に伴う血流変更を考慮した切除範囲の設定により,術中損傷および縫合不全を回避することができた.