2021 年 82 巻 2 号 p. 350-354
副乳癌は稀な疾患であり,その多くが腋窩からの発生で,乳房下溝尾側からの発生は極めて稀である.今回,乳房下溝尾側の前胸壁に発生した副乳癌の症例を経験したので報告する.症例は48歳,女性.左乳房下溝尾側の前胸壁皮下腫瘤を主訴に受診した.摘出生検にて,浸潤性乳管癌の亜分類である硬性型に類似した組織像を呈し,乳管内進展と考えられる所見も認めた.免疫組織化学では,GATA3・PCDFP-15・ER・PgRは陽性であった.乳房内に腫瘍を認めず,またmilk line上の乳房下溝に副乳の乳頭を認め,その尾側に腫瘍が位置していたことから副乳癌と診断した.断端陽性が疑われたため,残存腫瘍切除とmargin確保のため追加切除術を行った.術後補助療法としてtamoxifen内服を継続し,術後2年6カ月経過した現在,再発は認めていない.副乳癌の治療方針は確立されておらず,今後更なる症例の蓄積,検討が必要と考えられる.