日本臨床外科学会雑誌
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症例
腺筋上皮腫から発生した乳腺扁平上皮癌の1例
粕谷 雅晴中野 茂治神戸 美千代鈴木 正人
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キーワード: 扁平上皮癌, 腺筋上皮腫
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2021 年 82 巻 2 号 p. 355-361

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抄録

症例は70歳の女性,検診で左乳房腫瘤を指摘され当院を受診.左乳房AE区域に10mm大の分葉状腫瘤を認め,針生検で腺筋上皮腫の診断となり経過観察していた.初診から約1年後,左乳房腫瘤が10cm大まで急速増大したため,診断目的に全身麻酔下腫瘤摘出術を施行.病理診断結果は,既存の腺筋上皮腫の乳管上皮ないし筋上皮の扁平上皮化生成分を母地として扁平上皮癌が発生したと考えられる所見であった.術後約2カ月で局所再発を認め,追加の左乳腺全摘出術と腋窩リンパ節郭清術を施行.病理診断結果は扁平上皮癌の局所再発所見であり,郭清した腋窩リンパ節には転移を認めなかった.術後放射線照射(50Gy/25fr)施行し,化学療法としてEC療法4コース施行.その後約6カ月,明らかな再発所見認めず経過している.

乳腺扁平上皮癌は稀であり,予後不良とされる.確立された治療法がなく,予後に関しても一定の見解が得られておらず,更なる検討が望まれる.

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