2021 年 82 巻 2 号 p. 478-485
症例は78歳,女性.高熱と腰痛の増悪を認め,当院へ救急搬送された.血液検査にて著明な炎症反応の上昇と凝固異常を認め,腹部CTにて梨状筋膿瘍を認めた.検査後,問診にて針治療歴があることが判明した.膿瘍による全身性炎症反応症候群(SIRS),播種性血管内凝固(DIC)の診断に至り,抗菌薬投与,経皮的ドレナージを施行した.血液培養検査と膿瘍培養検査からMethicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA)が検出された.第6病日のCTでは,腸腰筋と脊柱起立筋に新たに膿瘍を認め,再度経皮的ドレナージを施行した.鍼治療後の疼痛と感染の時系列の一致から,鍼治療を契機に発症したMSSA菌血症を伴う多発膿瘍と考えられた.2回目のドレナージ後,炎症反応は速やかに低下し膿瘍の再燃は認めず,第42病日に転院となった.鍼治療後の膿瘍の原因菌はMSSAが最も多いとされ,不十分な感染管理では感染が成立するとされる.鍼治療後の膿瘍報告例は稀であり,これまでの報告例と文献的考察を加えて報告する.