2021 年 82 巻 4 号 p. 789-793
症例は60歳,女性.上腸間膜静脈に広範囲浸潤を認める局所進行膵頭部癌の診断にて切除不能と判断され当科へ紹介.上腸間膜静脈に中結腸静脈,下腸間膜静脈が流入する部位の末梢側では,癌の広範囲かつ高度浸潤により血流がほぼ途絶し,代償として中結腸静脈・下腸間膜静脈を介する発達した側副血行路を認めた.術中にまず側副血行路が温存できることを確認,上腸間膜静脈合併切除・非再建,膵頭十二指腸切除を施行した.術後経過良好にて,第34病日に退院となった.本症例は発達した側副血行路が温存可能であり,膵頭十二指腸切除での上腸間膜静脈切除・非再建による治癒的切除が可能であった.このような症例は非常に稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.